フィンランド的、アントレプレナーシップ教育とは?


「アントレプレナーシップ教育をフィンランドで研究しています!」

といっても、なかなかピンとこないのが切ないところ。実際私たちもどのような観点でアントレプレナーシップ教育をとらえ、他国と比較していったらよいのか迷います。そこで、今回の記事ではそもそもアントレプレナーシップ教育とは何か?その輪郭をとらえていきたいと思います。


■そもそもアントレプレナーシップ教育って?

-アントレプレナーシップ教育のざっくり説明

アントレプレナーシップ教育、もしくは起業家精神教育(以降 Entrepreneurship Education=EEと呼称)。ぱっと聞くと、会社を起業するための教育と聞こえるEEですが、大きく分けて2つの捉え方で世の中的に認知されています。ひとつは、前述した起業という観点での教育(狭義のEE)。もうひとつは、自分自身が人生を切り開くための力という捉え方(広義のEE)。ちなみに前者は”起業家教育”とされることもあります。今回の記事では、私たちが関心を持っている広義のEEについて説明します。

-わかりやすくまとめられたEUのアントレプレナーシップ教育

さて、EEの概要については上記で説明した通りなのですが、まだ少し抽象度が高いように感じます。この点について、分かりやすくまとめられた情報がありますので、そちらを紹介します。それは、European Commissionが発表したEntrepreneurship 。ここでは、アントレプレナーシップ、そしてアントレプレナーシップ教育を以下の通りに定義しています。

起業家精神とは、アイデアを行動に移す個人の能力です。

これには、創造性、革新性、リスクテイク、および目標の達成に向けて行動を計画および指示する能力が含まれます。これらの資質は、教育、職場、余暇活動、その他の社会活動における日常生活をサポートします。これらの資質は起業家精神に必要ですが、労働者の仕事に対する意識を高め、機会をつかむのにも役立ちます。

起業家教育とは、主に起業家精神を高めることを目的として、教育行政内で行われる幅広い活動を指します。起業家教育は、多くの労働市場関係者や組織によっても提供され、サポートされています。実用的な対策は、積極的な態度を教え込み、起業家精神に関連する知識とスキルを開発し、新しいビジネスを創出し、起業家とその従業員の能力を向上させ、職場やその他のすべての活動で起業家的な活動モードをもたらすことを目的としています。起業家教育は生涯学習とネットワーク化された運用モードに根ざしています。


出典:Proposal for a RECOMMENDATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF

THE COUNCIL on key competences for lifelong learning, 2005


-EEで育む力

EU Commisionは、前述の定義をさらに各論に落とし、目指すべきコンピテンシーについても語っています(2016年)。コンピテンシーは3つのエリア「Into action 行動にうつす」「Resources リソース(資源)」「Ideas & opportunities アイデアと機会」に分類され、その中に5個ずつのコンピテンシーが紐づいています。合計15のコンピテンシーで構成されています。それぞれのコンピテンシーには優劣も順番もありません。

出典:EntreComp: The Entrepreneurship Competence Framework 2016


■フィンランドも非常に注力するEE

-フィンランドにおけるEEの位置づけ

フィンランドでも、EUの動きを受け、アントレプレナーシップを国家の教育方針の中心的な役割にそえています。2014年にナショナルコアカリキュラム(日本の学習指導要領に相当)を改訂し、2016年より施行しましたが、その中で掲げられた”transversial competence 広範囲にわたるコンピテンシー(しばしば”21世紀に必要なコンピテンシー”と呼ばれるもの)”の7つの注力テーマの一つに設置。T6 Working life compenence and entrepreneushipです。これからの時代に必須のテーマとして認識しています。これが、フィンランドの大まかな特徴です。

出典:Finnish Curriculum Reform Building the Future 

-一貫した教育にも特徴あり

また、同時に感じるのはEEの一貫性。私の住んでいるOULUエリアを題材に説明すると、EEは幼児教育から大学まで一貫して方針がしめされています。エリアの統括である行政が全体のガイドラインを作成。現場(学校)は、そのガイドラインを参考に、オリジナルの形で教育活動を行っています。このガイドラインでは、各校種別に、幼児教育~大学教育まで、EEで目指すべき状態、そして目標が設定されています。フィンランドの場合は、授業設定、カリキュラムの設定はすべて地域、学校、先生に一任されているため、ガイドラインをもとに、運営の設計は各現場レベルで行われています。

詳細は以下のURLにありますので、興味のある方はご覧ください。

North Ostrobothnia entrepreneurship education strategy



今回の記事では、アントレプレナーシップ教育とは?そして、フィンランドのアントレプレナーシップ教育の概要を説明してきました。様々な定義や解釈がありますが、私たちは上記と捉えるところからスタートしています。

今後は、この考え方に沿いながら、コンピテンシーを伸ばすためのフィンランドのアントレプレナーシップ教育の事例を紹介していきたいと思います。ぜひ、楽しみにしていてください。

たなか家 教育研究所 in Finland

フィンランドの大学院で教育を学ぶ妻と、情報配信・ツアー企画などをする夫のふたりで手掛ける教育研究所。様々な形で現地情報を交えての交流・調査など行います。

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