【イベント実施報告】フィンランドのアントレプレナーシップ教育 Vol.2 職業体験&市民教育「Me & My City」テキストを読み解く!

5月31日(日)は「Me & My City」のお話でした。


Me & My Cityとは・・・

6年⽣と9年⽣(中3)における社会、経済、仕事生活を理解&体験するプログラム。
小6では全体の仕組みを、中3ではグローバルビジネスについてより一層ビジネスの内容で実施。アントレプレナーシップ育成における前向きな”経験”をつむ。学校内での授業10回と1日のMe & My City体験で構成されている。国のカリキュラム(日本の学習指導要領みたいなもの)をベースに構成。 はじまったのは2010年、運営はNPO団体TAT。 施設は地域ごとに設置されている。フィンランド8 割以上の学校が導入。授業はクラス教員が行い、Me & My CityではTATや企業スタッフも関わる。

なお、TATには公的資金が投入されていて、国の機関に近い存在。
https://www.tat.fi/en/


フィンランド語でMe & My Cityは yrityskylä(ウリトゥスキュラ)といい、英語の直訳はビジネスビレッジ。HP:https://yrityskyla.fi/en/

参考動画2分:https://www.youtube.com/watch?v=9cenCiJ3gVI

全10回のテキスト内容について共有し、感想のシェアなどをグループにて実施しました。


内容解説中の、チャットコメントをいくつか引用させていただきます。

「大人になるのは、嫌なことを我慢すること、大変な生活を何とか乗り越えるものって、思っている子は日本に多い気がする。」

「非常に総合的に考えさせられるプログラムだから、世の中が色んな人の相互関係でなりたっていることが実感できますね。わかることでワクワクするし、他者を意識する。日本の就労体験だと、働く大変さを知るという感じで、あまり、社会全体との結びつきは感じづらいかもしれない。」

「フィンランドでは、ソ連崩壊語の大不況の時代に自殺が大幅に増えた苦い経験があり、ウェルビーイングの向上は国家的な死活問題なので、ある程度安定した状態を各自が持てるよう、「家計を整える」「納税者になる」「(必要があれば)公的サービスをきちんと使う」ということを学んでほしいという思いがあるようです。」

そうですね、フィンランドのアントレプレナーシップ教育、こういったMe & My Cityは、「納税者になる」こと、仕事をすること、国の一員として自立していくことが不可欠という危機的な状況が背景あってこその注力です。


「欧州各国では教員の社会人経験者が多いようですが、フィンランドでもそうでしょうか?

日本では8割は社会人経験なし、アメリカでは8割が社会人経験あり、スウェーデンでも7割が社会人経験ありだそうです。」という質問に、フィンランドの教育視察をされていらっしゃる参加者よりお答え!

「フィンランドでは、教員は修士修了者なので、社会人経験者の比率は必ずしも高くないです。(もちろんいますが)しっかりと大学で学んでいますし、リカレント教育の機会も多いので、教授能力は全般的に高いと言われています。私たちが訪ねた小学校・中学校では2割の先生が大学に通っているとのことでした。」


そうなんです、学校の先生、大学に通っていたりします。私の周りでも何人かいるので、2割程度は他のエリアでも納得の割合です。働きながら同時に学んだり、休みの間に通う人もいれば、完全に先生の仕事は一旦停止して大学に通う人もいます。一定のコースを習得すると給与が上がるものもあり、学ぶことは自己研鑽のためだけではありません。


「日本の教育ではお金と性の話はタブー視されてるけど、生きていく上で必要な学び」

「お金のことは社会人になったら必要なことなのに、仕事を始める前に学べる機会ってほぼほぼなかったですね。学びたかった・・!」

「海外の教育と日本の決定的な差は社会と学校のリンクかな」

「学校にいると「違うのがいい」っていうのを聞く機会って本当に少ないですよね」

「最後の市民、働く側、消費者側三つの視点で振り返るというのが大事で画期的ですね。」


Me & My Cityは、内容をそのまま”手法”だけ、日本でやればいい、というものではなく、導入するためにどうするかを考えたかったわけではありません。


私が伝えたかったのは、フィンランドには社会・経済・仕事生活の視点を学ぶ機会が小さなころからあり、日本にもなんらかの形であったほうがいいと思っていること。なぜなら生きていく上で、国を支える国民として、個人としても全員にとって重要なことだからです。特に、自立し歩んでいくために実生活に必要な「お金(銀行・貯金・税金)」「仕事(多様な人の存在価値・磨くべき幅広いスキル)」についてはリアルに学んでおいた方がいいと考えています。

国民に、”自分はコミュニティの一員として権利と責任がある”という意識がしみこんでいるかどうか、それは様々な面において行動の違いとして表出する気がしています。

ただ、日本には日本らしい伝え方があるでしょうし、現状に合わせた学び方が必要だと考えています。自分たちなりの形を模索していければと思っています。




たなか家 教育研究所 in Finland

フィンランドの大学院で教育を学ぶ妻と、情報配信・ツアー企画などをする夫のふたりで手掛ける教育研究所。様々な形で現地情報を交えての交流・調査など行います。

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